工務店の倒産は本当に増えている?「過去最多」報道の中身と、契約前にできる備え

工務店の作業場。木材が整理して立てかけられ、作業台の上に鉋と差し金が置かれている

「工務店の倒産が過去最多」——2026年7月、そんな見出しがタイムラインに流れてきて、手が止まった方は多いと思います。家づくりを検討している最中なら、なおさらです。契約しようとしている会社は大丈夫なのか。今は建てないほうがいいのか。不安の質としては、かなり具体的なものです。

撮る側・伝える側として住宅会社の資料や現場に関わっていると、こうした報道が出たあとの数週間、営業の現場で説明に追われる様子を見かけます。そのとき交わされる会話は、たいてい「うちは大丈夫です」か「他社は危ないですよ」のどちらかに寄っていきます。どちらも、施主が本当に知りたいことには答えていないと感じます。

そこで、この記事は最初に一本の問いを立てます。その数字は、何を数えた数字か。 誰が集計したのか、どの範囲の会社を対象にしたのか、倒産だけなのか自主的な廃業を含むのか、いつからの期間と比べた「過去最多」なのか。この4点を確かめるだけで、報道の見出しと実態のあいだにある距離が見えてきます。前半ではこの作業を丁寧に行い、後半では視点を切り替えます。施主にとっての問題は、業界全体で何件の倒産が起きたかではなく、自分が契約した先で工事が止まるかどうかだからです。導入で宣言したこの縦糸を、各章で回収し、まとめで総括します。

先に立場を書いておきます。この記事は、危機を煽ることも、安心させることもしません。特定の会社が危ない、あるいは安全という示唆も一切しません。渡せるのは、数字の読み方と、契約前に自分で確認する手順だけです。また、木造建築工事業の倒産が通年で過去最多になるかどうかについて、現時点で見通しを書くことはしません。それは推測になるからです。数値はすべて、集計主体と対象期間を添えて記載します。

「過去最多」の出どころを確定させる

結論:2026年7月に報じられた「過去最多」は、帝国データバンクが集計した建設業全体の倒産と休廃業・解散の合計5,937件(2026年上半期)であり、比較の対象は2000年以降の上半期です。工務店の倒産件数ではありません。

まず、数字の出どころを一つに特定します。2026年7月14日、帝国データバンクが「『建設業』の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)」を発表しました。ここに出ている数字が、その後の報道と拡散の起点になっています。

5,937件の内訳

項目件数(2026年1〜6月)前年同期比
倒産1,043件+57件(+5.8%)
休廃業・解散4,894件+1,064件(+27.8%)
合計5,937件

出典:帝国データバンク「『建設業』の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)」2026年7月14日、以下この章同)

「過去最多」とされているのは、この合計5,937件です。上半期ベースで、リーマン・ショック直後の2009年上半期(5,811件)を上回りました。同レポートの集計期間は2000年1月1日から2026年6月30日までと注記されており、つまり2000年以降の上半期での比較です。統計が始まって以来の最多、という意味ではありません。

もう一つ、内訳のバランスに注目してください。合計のうち倒産は1,043件で、全体の17.6%にすぎません。残る8割超は休廃業・解散、つまり法的整理ではなく自主的に事業をたたんだケースです。しかも増加幅で見ると、倒産が+57件なのに対して休廃業・解散は+1,064件。増えた分のほとんどは、倒産ではありません。この点は第4章で詳しく扱います。

なお同レポートの倒産は、負債1,000万円以上の法的整理を集計対象としています。休廃業・解散は、特段の手続きを取らず企業活動が停止した状態、または商業登記等での解散(みなし解散を除く)と定義されています。件数を語るときは、この定義がセットになっていることを忘れないでください。

業態別の947件も「倒産件数」ではない

同レポートは業態別の内訳も示しています。最も多いのが、新築戸建てなどを担うハウスメーカーや工務店などの「木造建築工事」で947件、全体の約16%を占めました。上半期で900件を超えたのは2017年以来9年ぶりです。次いで左官工事104件(前年同期比+67.7%)、金属製屋根工事50件(同+66.7%)、タイル工事45件(同+60.7%)と続きます。

ここで注意が必要です。この947件も、倒産と休廃業・解散の合計値です。同レポートには木造建築工事の倒産と休廃業の内訳は記載されておらず、私が確認した範囲では公表されていません。したがって「工務店の倒産が947件」という書き方は成立しません。

3つの変換が起きている

見出しの「建設業の倒産・廃業が最多の5937件」から、SNSでよく見る「工務店の倒産が過去最多」に至るまでに、少なくとも3つの変換が起きています。

変換元の数字変換後の言い方
範囲建設業全体工務店
指標倒産+休廃業・解散倒産
比較基準2000年以降の上半期過去最多(期間の限定なし)

付け加えておくと、報道機関の見出し自体は正確でした。日本経済新聞は「建設業の倒産・廃業が最多の5937件 1〜6月、帝国データ調べ」と報じており(出典:日本経済新聞 2026年7月14日)、範囲・指標・集計主体がいずれも明示されています。ずれが生じるのは、その先の要約と拡散の段階です。

この章の縦糸の回収はこうなります。5,937件は、建設業という業界全体で、法的整理と自主的な退出の両方を、2000年以降の上半期と比べて数えた数字です。工務店を数えた数字でも、倒産だけを数えた数字でもありません。

住宅の会社に絞ると、数字はどう変わるか

結論:住宅に近い分類である木造建築工事業の倒産は、2026年上半期118件・前年同期比87.3%増で、急増しているのは事実です。ただし東京商工リサーチが1989年以降の最多とする2004年の198件は、通年か上半期かが明記されていないため、上半期118件と直接比べて最多かどうかは判定できません。

建設業全体ではなく、住宅を建てる会社に絞るとどうなるか。この問いに最も近い数字を出しているのが、東京商工リサーチです。

118件という数字

東京商工リサーチは2026年7月17日、木造建築工事業の倒産が2026年上半期(1〜6月)で118件、前年同期比87.3%増だったと発表しました。集計対象は負債1,000万円以上、集計開始は1989年です。前年の倍近くに増えており、急増していること自体は事実です。

同時に、同社は次のようにも書いています。1989年以降では、デフレ期の2004年の198件が過去最多だが、上半期で100件を上回ったのは2013年(106件)以来13年ぶりである、と(出典:東京商工リサーチ「ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃」2026年7月17日)。

つまり、集計主体自身が「過去最多ではない」と明示しています。13年ぶりの水準に戻った、というのが正確な言い方です。急増を軽く見る必要はありませんが、過去に経験したことのない事態が起きている、という読み方も事実に合いません。

「工務店」に対応する統計分類は存在しない

ここからが、この記事でいちばん伝えたい部分です。

そもそも、「工務店」という言葉に対応する統計上の分類は、存在しません。日本標準産業分類(令和5年〔2023年〕7月改定)で木造建築工事業[0651]として定義されているのは、主として木造建築物のみを完成する事業所であり、該当例として木造住宅建築工事業が挙げられています。一方で、木造建築リフォーム工事業[0661]は不該当例として明記されています(出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)日本標準産業分類)。

日常語の「工務店」と、統計の分類がどうずれるかを並べてみます。

実際の事業者の姿該当する統計分類木造建築工事業[0651]に入るか
木造の新築住宅だけを手がける会社木造建築工事業[0651]入る
リフォームが主体の工務店建築リフォーム工事業[066]入らない
大工工事を請け負う事業者大工工事業[0711]入らない
木造以外も手がける総合建設会社建築工事業(木造建築工事業を除く)[064]入らない

近所にある、地域で家を建てている会社を思い浮かべてください。新築とリフォームを両方やっている、鉄骨の店舗も建てたことがある、社長が大工出身で職人も抱えている——こうした実像を持つ会社は珍しくありませんが、統計上はそれぞれ別の分類に振り分けられます。木造建築工事業の倒産件数は、工務店の倒産件数の近似値ではあっても、一致しません

建設業許可の29業種にも「木造建築工事業」はない

もう一段ややこしいのは、統計の分類と、建設業法の許可業種が別の体系だという点です。建設業許可は29の業種に分かれていますが、その中に「木造建築工事業」という業種はありません。住宅の新築に最も近いのは「建築工事業」(建築一式工事)の許可です。

つまり、統計で数えられている単位と、行政が許可を出している単位と、私たちが日常語で「工務店」と呼んでいる対象は、三者三様にずれています。これは調査会社の不備ではなく、産業の実態が分類より複雑だというだけの話です。ただ、この構造を知らないまま件数だけを見ると、「うちの地域の工務店が次々に潰れている」という像を、実際より鮮明に描いてしまいます。

縦糸に戻ります。118件は、東京商工リサーチが、木造建築物のみを完成する事業所という統計上の定義に沿って、負債1,000万円以上の法的整理を、1989年以降の系列の中で数えた数字です。「工務店」という言葉が指す範囲とは、初めからぴったり重なっていません。

なぜ増えているのか——調査会社が挙げている要因

結論:増加の要因として資材高・住宅ローン金利の上昇・人手不足・建築基準法改正を挙げているのは、信用調査会社です。国土交通省が「法改正や資材高が倒産を増やした」と因果を明言した資料は、私が確認した範囲では見つかりませんでした。

要因の話に入る前に、主語をはっきりさせておきます。以下に並べる要因は、東京商工リサーチと帝国データバンクという民間の信用調査会社が、自社のレポートで挙げているものです。公的機関がそう述べているわけではありません。

東京商工リサーチは、木造建築工事業の倒産増加の背景として、中東情勢による住宅設備・資材価格の高騰やナフサ不足といったコスト高、人手不足、住宅ローン金利の上昇、建売住宅のコストと購買層の算定の乖離、マンションやリノベーション物件との競合、大手との競争激化を挙げています。帝国データバンクは、建築基準法改正に伴う確認申請の厳格化を要因に列挙しています。

これらの主張の当否を私が判定することはできません。できるのは、それぞれの要因について、公的な統計がどんな数字を示しているかを並べることです。

資材と工事費——木造住宅の工事費指数は5年で2割超上がった

住宅の工事費そのものの動きを見るには、国土交通省の建設工事費デフレーターが最も直接的です。この統計には「木造住宅」という系列があり、2026年4月分の公表から2020年度基準(2020年度平均=100)に改定されています。

年度木造住宅の指数(2020年度=100)
2012年度87.9
2015年度93.5
2020年度100.0
2021年度110.3
2022年度116.7
2023年度(暫定)114.8
2024年度(暫定)118.8
2025年度(暫定)122.3
2026年4月(月次)125.2

出典:国土交通省「建設工事費デフレーター」

2020年度から2025年度で22.3%の上昇、2012年度と比べると約4割の上昇です。同じ家を建てるための工事費が、5年で2割強上がったことになります。

ただし、この指数には留保があります。デフレーターは消費税と営業余剰を含まず、用地費・補償費も対象外です(同統計の注記)。したがって、施主が実際に支払う総額の上昇率とは一致しません。あくまで工事費の部分の物価変動を測る指標です。価格そのものの内訳がどう積み上がるかは、注文住宅の価格構造で整理しています。

木材価格は「落ち着いた」ではなく「再び上がっている」

資材の中でも木材の動きは、住宅にとって直接的です。日本銀行の企業物価指数(2020年平均=100)で、木材・木製品の類別を時系列で追うと、単純な上昇でも下降でもない波形が見えます。

時点木材・木製品の指数
2022年6月(月次のピーク)178.3
2024年12月132.2
2026年6月146.9(前年同月比+8.0%)

出典:日本銀行「企業物価指数(2026年6月速報)」2026年7月10日

いわゆるウッドショックのピークは2022年6月で、そこから2024年12月まで下落しました。ここだけを見れば「木材高騰は終わった」と言えます。ところが2026年に入って再び上昇し、6月には前年同月比+8.0%まで戻しています。上昇に寄与した品目として、住宅建築用木製組立材料、普通合板、集成材が挙げられています。

つまり、木材価格は一度下がって、再び上がっている局面です。2024年時点の感覚のまま「もう落ち着いた」と考えていると、見積もりの上振れに驚くことになります。

なお、以前は日本銀行の企業物価指数に「建設材料」という区分がありましたが、2020年基準への改定で廃止されており、現在は存在しません。資材高を語るときは、木材・木製品、窯業・土石製品、鉄鋼、非鉄金属といった類別を個別に見る必要があります。

人件費——公共工事の積算単価は14年連続で上昇

人手不足とその裏返しである人件費の上昇について、公的に確認できる数字は公共工事設計労務単価です。2026年2月17日発表、同年3月から適用される単価では、全国全職種の加重平均が25,834円(前年度比+4.5%)で、平成25年度の改定から14年連続の上昇となりました。住宅に関わる職種では、大工が30,331円、前年度比+3.1%です(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」令和8年2月17日)。

ここは誤読が非常に多い数字なので、はっきり書いておきます。これは公共工事の予定価格を積算するために用いる単価であり、民間の注文住宅で働く職人の日当ではありません。同資料には、この単価に事業主が負担すべき必要経費分は含まれないこと、下請代金に計上しない・値引く行為は不当だとする注意も明記されています。「大工の日当が3万円」という読み方は誤りです。

着工戸数——通年では減、直近では反転という二層構造

需要側の指標である新設住宅着工戸数は、期間の取り方で見え方が正反対になります。ここは特に慎重に読む必要があります。

まず通年です。2025年(令和7年)の新設住宅着工戸数は総戸数740,667戸(前年比▲6.5%、3年連続減)、うち持家は201,285戸(同▲7.7%、4年連続減)でした(出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)」令和8年1月30日)。持家が4年続けて減っているのは事実です。

一方、2026年に入ってからの月次は大きく振れています。

総戸数の前年同月比
2025年3月+39.6%
2025年4月▲26.6%
2025年5月▲34.4%
2026年3月▲29.3%
2026年5月+33.9%

2026年5月は総戸数57,877戸で前年同月比+33.9%、持家は15,708戸で+31.8%と、2か月連続の増加でした(出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和8年5月分)」令和8年6月30日)。そして2026年1〜5月の累計では、総戸数▲2.8%、持家+0.4%とほぼ横ばいです。

この振れ幅は、2025年4月1日に施行された建築基準法・建築物省エネ法の改正(省エネ基準適合の全面義務化と、いわゆる4号特例の縮小)を挟んだ駆け込みと反動を反映したものとみられます。ただし、国土交通省の着工統計の報道発表には法改正を原因とする記述は一切なく、機械的な集計が示されているだけです。因果として断定できる公的資料は確認できませんでした。

したがって、この記事では「着工が減り続けているから工務店が苦しい」とは書きません。正確には、2025年通年は減少、2026年に入ってからの月次は前年の落ち込みの反動もあって振れが大きく、累計ではほぼ横ばい、です。

書かないことも明示しておきます

要因としてよく語られるものの、2026年時点のデータと合わないため、この記事で採用しなかった説明が2つあります。

(出典:中小企業庁 金融小委員会 第10回資料中小企業庁 民間ゼロゼロ融資に関する資料東京商工リサーチ「2025年度の『ゼロゼロ融資』利用後倒産410件」厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」

縦糸の回収です。要因として語られる数字にも、それぞれ誰が、何を、どの期間で測ったのかという限定が付いています。工事費のデフレーターは工事費だけを測り、労務単価は公共工事の積算だけを測り、着工統計は月次と通年で逆の像を見せます。要因の説明を読むときも、数字の出自を見る癖は同じように役に立ちます。

倒産統計に現れない「静かな退出」

結論:件数の増加分の大半は倒産ではなく、休廃業・解散です。その背景には経営者の高齢化があり、黒字のまま事業をたたむケースが半数近くを占めます。施主にとっては、倒産よりもこちらのほうが遭遇しやすい形かもしれません。

第1章で見たとおり、帝国データバンクの5,937件のうち倒産は1,043件、割合にして17.6%でした。残る4,894件は休廃業・解散です。倒産の約4.7倍にあたります。この章では、この大きいほうの数字を見ます。

更新をしなかった業者が1年で9,725業者

もう一つ、倒産統計にも休廃業統計にも現れにくい退出の形があります。建設業許可の失効です。

国土交通省の調査によると、令和7年度(2025年度)中に建設業許可が失効した業者は17,998業者で、前年度比+51.9%でした。その内訳は次のとおりです。

失効の形業者数(令和7年度)前年度比
廃業届出8,273業者+14.1%
更新手続きをせず失効9,725業者+111.6%

出典:国土交通省「全国の建設業許可業者数は3年連続で増加」令和8年5月15日、以下この章同)

注目すべきは下の行です。廃業を届け出たのではなく、5年ごとの更新手続きを行わずに許可が失効した業者が9,725、前年度の2倍以上に増えています。倒産のようなニュースにはなりません。届出すらありません。ただ、更新の時期が来たときに手を挙げなかった、というだけです。

半数近くは黒字のまま退出している

なぜ、そういう終わり方をするのか。帝国データバンクの休廃業・解散に関する調査が、手がかりを示しています。2025年の全国の休廃業・解散は67,949件(前年比▲1.6%)、うち建設業は8,217件でした。同調査が示す経営者と業績の姿は次のとおりです。いずれも全業種の数字で、建設業に絞った内訳は公表されていません

出典:帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2025年)」2026年1月9日

黒字廃業が49.1%ということは、事業が赤字だから畳んだわけではないケースが半数近くあるということです。経営者が70代に入り、後を継ぐ人がいない。今なら取引先にも職人にも迷惑をかけずに終われる。そういう判断が、この数字の背後にあると考えられます。帝国データバンクはこれを「静かな退場」と表現しています。

私が現場で会ってきた地域の会社にも、社長が一人で設計から現場管理までこなし、腕のいい大工と長く組んでいる、という形は少なくありませんでした。そうした会社の強さは、そのまま属人性の高さでもあります。危機ではなく世代交代の壁だ、と言うほうが実態に近い場面はあると感じます。

母数は減っていない。ただし「建築工事業」だけは減っている

では業界全体が縮小しているのかというと、母数の数字はそう単純ではありません。

2026年3月末時点の全国の建設業許可業者数は483,823業者で、前年度比+123業者(+0.03%)、3年連続の増加です。ピークだった2000年3月末の600,980業者と比べると▲19.5%ですが、足元では減っていません。

ところが、業種別に見ると様子が変わります。前年比で減少したのは29業種中6業種のみで、そのうち減少数が最大だったのが建築工事業で、▲2,626業者、率にして▲1.8%の減少でした。建築工事業の許可業者数は140,967業者で、平成12年(2000年)比では▲37.8%です。同じ期間に、大工工事業は82,756業者(前年比+1.4%、平成12年比+28.6%)、屋根工事業は58,276業者(同+2.6%、+112.2%)と増えています。

許可業種業者数(2026年3月末)前年比平成12年比
とび・土工工事業184,825+0.6%+15.2%
建築工事業140,967▲1.8%▲37.8%
土木工事業130,833▲0.8%▲22.1%
大工工事業82,756+1.4%+28.6%
屋根工事業58,276+2.6%+112.2%

読み方はこうなります。建設業という業界全体の事業者数は横ばいですが、建物一式を請け負う立場の業者だけが細っている。第1章で見た「倒産の中身」と重ねると、家を一式で請け負う会社の層が薄くなりつつある、という像が浮かびます。

なお、この記事では倒産件数を母数で割った倒産率の時系列比較は行いません。比較に必要な過去時点の許可業者数を私が取得していないためです。率で語れば分かりやすくなりますが、根拠のない分母で計算した率は、件数よりも誤解を招きます。

縦糸の回収です。倒産件数は、退出の一形態しか数えていません。届け出て畳んだ会社も、更新せずに消えた会社も、そこには入っていません。そして施主にとっては、どの形で消えたかより、いつ消えたかのほうが重要です。次の章でそこに移ります。

施主にとっての本当のリスクは2つだけ

結論:施主が備えるべきは、工事中に工事が止まることと、引渡し後に会社がなくなることの2つです。この2つに対応する制度は別々で、時間軸が重なっていません。

ここまで件数の話を続けてきましたが、あなたが契約する会社は1社です。業界全体で何件だったかは、その1社が続くかどうかを直接には教えてくれません。ここから視点を切り替えます。

施主にとって、住宅会社がいなくなることの影響は、突き詰めると2つの形で現れます。

  1. 工事の途中で工事が止まる(着工後・引渡し前)
  2. 引渡し後に、不具合が出ても直してくれる相手がいない(引渡し後)

この2つは、起きるタイミングも、困り方も、対応する制度もまったく違います。

制度は2つあるが、守る時間帯が違う

住宅完成保証制度住宅瑕疵担保責任保険
法的な性格任意(法律上の義務なし)住宅瑕疵担保履行法に基づく資力確保措置の一方式(事業者に義務)
守る時間帯工事中(事業者が工事を継続できなくなったとき)引渡し後10年間
対象増嵩工事費用、前払金と出来高の差額による損害、引継ぎ業者のあっせん構造耐力上主要な部分・雨水の浸入を防止する部分の瑕疵の補修費用等
加入するのは事業者(登録制)事業者

表の2列は、時間軸で見ると接しているだけで重なっていません。左は引渡しまで、右は引渡しから。この境目が、次に述べる誤解の温床になっています。

「瑕疵保険があるから工事中も安心」は誤りです

住宅瑕疵担保責任保険は、新築住宅を引き渡す建設業者・宅地建物取引業者に義務付けられた資力確保措置の一方式で、加入率も高く、契約時に説明を受ける機会があります。それだけに、「保険に入っているから、万一のときも大丈夫」という理解が生まれやすい制度です。

しかしこれは、工事中の中断に関しては誤りです。国土交通大臣が指定する住宅紛争処理支援センターである公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター(住まいるダイヤル)は、住宅瑕疵担保責任保険を、引き渡された新築住宅に特定の瑕疵があった場合に補修等を行った事業者に保険金が支払われる制度だと説明したうえで、次のように明記しています。

工事を続行するためにこの保険制度を利用することはできません

出典:住まいるダイヤル 電話相談事例

理由は制度の設計を見れば分かります。瑕疵保険が対象とするのは「引き渡された新築住宅」の瑕疵であって、まだ引き渡されていない工事の続行費用ではありません。引渡しに至らなかった建物は、そもそもこの保険の出番ではないのです。

引渡し後については、直接請求という仕組みがある

一方、引渡し後に事業者がいなくなった場合には、制度が用意されています。住宅瑕疵担保履行法は、新築住宅を供給する建設業者・宅地建物取引業者に、保証金の供託または保険加入による資力確保措置を義務付けています(資力確保義務は2009年10月1日施行)。対象は構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分で、期間は引渡しから10年間です。

出典:国土交通省「住宅瑕疵担保責任保険について」国土交通省 住宅瑕疵担保履行法コーナー(供託方式の解説ページ)

ここで一点、単純化してはいけない部分があります。事業者が健在な場合、保険金は補修等を行った事業者に支払われます。施主が直接請求できるのは、事業者が倒産等で補修を行えない場合に限られます。「瑕疵保険は施主がお金をもらえる制度」という理解は正確ではありません。引渡し後の保証全般については、注文住宅の保証とアフターサービスで法律の義務と会社の上乗せを切り分けて整理しています。

縦糸の回収です。前半で扱った件数は、業界の状態を数えた数字でした。ここから先に必要なのは、あなたの契約が、どちらの時間帯のどの制度でカバーされているかを数えることです。件数ではなく、自分の契約書と交付書類を数える作業に変わります。

契約前にできる4つの確認

結論:会社の将来を予測することはできませんが、契約の条件を整えることはできます。許可の確認、完成保証の有無、支払い条件、瑕疵保険の付保証明——この4つは、契約前なら誰でも自分で確認できます。

先に断っておきます。以下は「危ない会社を見抜く方法」ではありません。財務の健全性を外部から判定することは私にはできませんし、この記事は特定の会社が危ない・安全という示唆を一切しません。できるのは、万一のときに自分が被る損失を小さくしておくことだけです。

1. 建設業許可を確認する

建設業の許可は、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで検索できます。案内ページによれば、代表者名、所在地、電話番号等の企業情報を調べられます。

監督処分の履歴は、これとは別のサイトにまとまっています。国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで、最近5年分の行政処分等情報が、おおむね月1回更新されています(出典:国土交通省ネガティブ情報等検索サイト)。

ここに盲点があります。建設業許可は、すべての工事に必要なわけではありません。建設業法第3条第1項ただし書と建設業法施行令第1条の2により、いわゆる軽微な建設工事は許可なしで請け負えます。建築一式工事の場合、請負代金1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅であれば許可は不要です(いずれも消費税・地方消費税を含む金額。出典:国土交通省「建設業の許可とは」)。

延べ面積150㎡は約45坪です。一般的な注文住宅の多くはこの範囲に収まります。つまり、許可がないこと自体は違法でも異常でもないケースがあり、「許可の有無」だけで小規模な事業者を選別することはできません。許可があれば更新のたびに一定の要件を満たしていることが確認できる、という程度の意味に受け取るのが妥当です。

2. 住宅完成保証制度に加入しているか聞く

工事中の中断に備える制度は、第5章で見たとおり住宅完成保証制度です。住まいるダイヤルはこれを、工事を継続できなくなった場合に工事費用や前払金等の損失を保証したり、引き継ぎ業者をあっせんすることができる任意加入の保証制度と説明しています。

この制度で押さえるべき性格は3つあります。

3つ目が特に重要です。運営している主体は複数あり、たとえば住宅保証機構株式会社と株式会社住宅あんしん保証が、それぞれ自社の商品として制度を運営しています(住宅保証機構住宅あんしん保証)。保証の割合や上限額は運営主体ごとに設計が違うため、この記事では単一の数値を「完成保証の内容」として示しません。加入の有無を聞いたら、どこの制度で、保証書はいつ交付されるのかまで確認してください。

もう一つ、住まいるダイヤルは、完成保証制度の内容は契約約款や保証会社によって異なり、着工前でも適用が受けられるかは契約約款の内容により異なると述べています(出典:住まいるダイヤル 電話相談事例)。契約はしたが着工前、という段階の事故は、制度があっても対象外となりうる、ということです。

3. 支払いを工事の進み具合に合わせる

制度の有無にかかわらず、損失の大きさを左右するのは支払いのタイミングです。ここには公的な注意喚起があります。住まいるダイヤルは、工事請負契約について次のように述べています。

工事の進行状況に応じて工事代金を支払い、代金の先払いにならないように注意することが必要

出典:住まいるダイヤル 電話相談事例

この事例は、着工前に900万円を先払いしていた事案でした。別の事例では、工事代金2,000万円のうち1,500万円を契約時に支払っており、かなり過払いになっていると指摘されています。

工事が止まったときに失うのは、払った金額と、そのときまでに出来上がっている部分の価値との差額です。差額が小さければ、引継ぎ業者を探す交渉も現実的になります。逆に、基礎しかできていない段階で7割を払っていれば、その差は大きな損失として残ります。

なお、前払金が請負代金の何割までなら妥当か、という数値基準については、国土交通省・消費者庁・国民生活センターのいずれにも公的な上限や推奨割合は確認できませんでした。したがってこの記事では比率の目安を示しません。示せるのは、着工前・上棟時・引渡し時といった各段階で、支払額と工事の出来高が大きく離れていないかを契約前に確認する、という手順だけです。契約から引渡しまでの段階ごとの流れは、注文住宅の流れにまとめています。

4. 瑕疵保険の付保証明を確認する

引渡し後に備える確認です。住宅瑕疵担保履行法の資力確保措置は、保険と供託のどちらかを事業者が選びます。契約前・契約時に確認しておくのは次の3点です。

保険方式では、原則として保険法人の現場検査を工事中に受ける必要があるため、着工前に申込みが行われます。したがって「保険に入るつもりです」ではなく、いつ申し込むのか、いつ書類が手元に来るのかまで聞いておくと、進行の実態が見えます。

そして繰り返しになりますが、この保険は引渡し後の瑕疵に対応するものであり、工事中の中断には使えません。4つの確認のうち、工事中を守るのは2番と3番、引渡し後を守るのが4番です。1番はそのどちらでもなく、相手を知るための最初の一歩です。

会社ごとの比較軸そのものについては、会社選びガイドに契約前のチェックリストとしてまとめています。

この数字を、いつ見直すか

結論:2026年上半期の数字で確定しているのは「急増した」ことまでで、通年でどうなるかは2027年1〜2月にならないと分かりません。この記事も、そこで書き換わる可能性があります。

最後に、この記事自体の賞味期限を書いておきます。数字を扱う記事で、いつの時点の話なのかを曖昧にしたままにするのは、報道の見出しと同じ問題を繰り返すことになるからです。

現時点(2026年7月)で確定しているのは、帝国データバンクの5,937件(2026年1〜6月)、東京商工リサーチの木造建築工事業118件(同)、国土交通省の許可業者数483,823業者(2026年3月末)までです。木造住宅の工事費デフレーターの2025年度122.3は暫定値です。

そして、まだ分かっていないことがあります。木造建築工事業の倒産件数が、通年で2004年の198件を超えるかどうかです。上半期118件というペースだけを見れば超えそうに思えますが、倒産件数は下半期の景況次第で大きく動きますし、私には予測する根拠がありません。この判定が確定するのは、東京商工リサーチと帝国データバンクが2026年通年の集計を発表する2027年1〜2月頃です。それまでは「上半期は118件で前年同期比87.3%増だった」という事実の範囲で読むのが正確です。

そのほか、直近で更新される主な統計は次のとおりです。着工統計の月次は毎月末に翌々月分が公表され、企業物価指数は翌月10日前後、建設業許可業者数調査は毎年5月中旬、公共工事設計労務単価は毎年2月中旬に更新されます。この記事の数値も、それに合わせて見直す方針です。

まとめ

この記事の縦糸は「その数字は、何を数えた数字か」でした。3点で振り返ります。

  1. 見出しの5,937件は、建設業全体の倒産と休廃業・解散を、2000年以降の上半期と比べた合計:倒産はそのうち1,043件、17.6%にすぎません。住宅に近い木造建築工事業に絞ると、東京商工リサーチの集計で2026年上半期118件・前年同期比87.3%増と急増していますが、同社が1989年以降の最多とする2004年の198件は通年か上半期かが明記されておらず、上半期118件と直接比べて最多かどうかは判定できません。そもそも「工務店」に対応する統計分類も、建設業許可の業種も存在せず、日常語と統計は初めからずれています
  2. 増えているのは倒産よりも、静かな退出のほう:帝国データバンクの数字では、建設業の休廃業・解散は倒産の約4.7倍です。全業種で見ると経営者の平均年齢は71.5歳、黒字のまま畳んだ企業が49.1%を占めます(業種別の内訳は公表されていません)。建設業許可も、更新手続きをせず失効した業者が令和7年度に9,725業者と前年度の2倍以上に増えました。許可業者数の総数は3年連続で増えている一方、建物一式を請け負う建築工事業の許可だけは29業種中で最大の減少幅です
  3. 施主のリスクは件数ではなく、工事中に止まることと引渡し後にいなくなることの2つ:前者に対応するのが任意制度の住宅完成保証、後者に対応するのが住宅瑕疵担保責任保険で、両者の時間軸は重なりません。住まいるダイヤルが明記しているとおり、工事を続行するために瑕疵保険を使うことはできません。契約前にできるのは、許可の確認、完成保証の加入有無と約款、支払いを出来高に合わせること、瑕疵保険の付保証明の4点です

会社の将来を予測することは、私にはできません。この記事も、どこかの会社が危ない、あるいは安全だという示唆はしていません。できるのは、報道の数字を出自まで戻して読むことと、万一のときに自分が失う額を小さくしておくことだけです。

都道府県別のおすすめ会社は、トップページのセレクターから探せます。あわせて、引渡し後の保証の読み方は対になる記事の注文住宅の保証とアフターサービス、会社ごとの比較軸と契約前チェックリストは会社選びガイド、契約から引渡しまでの段階と支払いのタイミングは注文住宅の流れ、価格の内訳と資材高の影響は注文住宅の価格構造にまとめています。


本記事の作成方針:本記事は、住宅会社のカタログやSNS動画を撮影・編集する側にいる映像ディレクターの視点で、2026年7月に相次いだ建設業の倒産・休廃業に関する報道を、集計主体の発表原文と公的統計の公表資料だけで読み直したものです。参照した主な資料は、帝国データバンク「『建設業』の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)」(倒産1,043件・休廃業解散4,894件・合計5,937件、業態別の木造建築工事947件、集計期間2000年1月1日〜2026年6月30日)/東京商工リサーチ「ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃」(木造建築工事業118件・前年同期比87.3%増、1989年以降の最多は2004年の198件)/帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2025年)」(全業種の経営者平均年齢71.5歳、80代以上24.4%、黒字廃業49.1%)/国土交通省「全国の建設業許可業者数は3年連続で増加」同 別添(許可業者数483,823業者、許可失効17,998業者、更新せず失効9,725業者、業種別の増減。件数は別添に掲載)/国土交通省「建設工事費デフレーター」(木造住宅の2020年度基準指数)/日本銀行「企業物価指数(2026年6月速報)」(木材・木製品)/国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)」住まいるダイヤル 電話相談事例(完成保証の位置づけ、瑕疵保険を工事続行に利用できないこと)/国土交通省「住宅瑕疵担保責任保険について」です。件数はすべて集計主体と対象期間を添えて記載し、集計主体が異なる数字を合算・比較していません。倒産件数を母数で割った倒産率の時系列比較は、過去時点の許可業者数を確認できていないため行っていません。特定の企業名は一切記載せず、特定の会社が危ない・安全であるという示唆もしていません。木造建築工事業の通年件数が過去最多になるかどうかの見通し、前払金比率の目安、完成保証の保証割合・上限の一律の数値は、いずれも公的または一次の根拠を確認できないため記載を見送りました。個別のケースにおける制度の適用可否は、事業者・建築士などの専門家、住宅瑕疵担保責任保険法人、住まいるダイヤル等の公的な相談窓口への確認を前提としています。年次更新は、東京商工リサーチ・帝国データバンクの通年集計(毎年1〜2月)、建築着工統計の年計(1月末)、建設業許可業者数調査(5月中旬)、公共工事設計労務単価(2月中旬)の公表に合わせて数値を差し替える方針です。